子供の頃、デパートへ行く日は特別だった。
買い物そのものも楽しかったけれど、私にとって最大の楽しみは最上階にある食堂だった。エレベーターを降りると、広々としたフロアに料理の匂いが漂い、大人たちの話し声や食器の音が響いている。その空間に足を踏み入れるだけで、なんだか少し大人になったような気分になった。
そんな食堂で、いつも憧れの存在だったのがプリンアラモードだ。
メニューの写真を見るだけで胸が高鳴った。
銀色の器に盛られた大きなプリン。その周りには色とりどりのフルーツ。真っ赤なさくらんぼに、みかん、桃、バナナ。そしてたっぷりの生クリーム。まるで宝石箱のようだった。
普段のおやつではなかなか出会えない豪華さで、「今日はプリンアラモードを頼んでいいよ」と言われた日は、それだけで一日が特別な日になった。
運ばれてくるまでの時間も楽しい。
まだかな、と何度も厨房の方を見てしまう。
そして、ようやく目の前に置かれた瞬間の感動。
写真で見たものが本当に自分の前に現れたというだけで、心が躍った。
どこから食べようか迷うのも楽しかった。まずはプリンか、それとも生クリームか。最後にさくらんぼを残しておくべきか。そんな小さな作戦を考えながらスプーンを動かしていた。
今の基準で見れば、特別高級なデザートではなかったのかもしれない。
けれど、あの頃の私には最高のごちそうだった。
大人になった今でも、ときどきプリンアラモードを見かけることがある。もちろんおいしいのだけれど、本当に懐かしいのは味そのものではない。
家族と出かけた休日の空気や、デパートのにぎわい、注文した品を待つ時間。そして、目の前に運ばれてきた瞬間の胸の高鳴り。
あのプリンアラモードには、甘さだけではなく、子供の頃のワクワクまで一緒に盛り付けられていたのだと思う。
