デパート食堂は、子供にとってテーマパークだった

子供の頃、デパートへ行く日は特別だった。

普段は近所の商店街で買い物を済ませていた我が家にとって、デパートは少しだけよそ行きの場所だった。親に手を引かれながら大きな入口をくぐり、きらびやかな売り場を歩くだけで気分が高揚した。

そして何より楽しみだったのが、最上階の食堂である。

買い物の途中でエレベーターに乗り、「レストラン・食堂」の表示が見えてくると胸が弾んだ。扉が開けば、そこには広いフロアとたくさんのテーブル。家族連れや買い物帰りの人たちで賑わい、どこか華やかな空気が漂っていた。

今思えば、メニューはごく普通だった。

カレーライス、オムライス、ナポリタン、ハンバーグ、お子様ランチ。

けれど子供の私には、そのどれもがごちそうに見えた。

家では食べられないわけではない。それなのに、デパート食堂で食べると特別な料理になる。

大人たちに混じって席につき、メニューを開き、何を頼むか真剣に悩む。その一連の時間そのものが楽しかったのだと思う。

窓際の席に座れた日は少し得をした気分になった。

街を見下ろしながら食事をするだけで、自分も大人の仲間入りをしたような気持ちになったものだ。

今では大型商業施設のフードコートが当たり前になり、デパートの大食堂も少なくなった。

便利になった一方で、あの独特の高揚感を味わう機会は減ったように思う。

デパート食堂は単に食事をする場所ではなかった。

買い物の日を締めくくる舞台であり、子供にとっては小さなテーマパークだった。

今では大型商業施設のフードコートが当たり前になり、かつてデパートの最上階にあった大食堂も、その多くが姿を消してしまった。

便利になったのかもしれない。

けれど、あの場所には独特の高揚感があった。

買い物の途中で立ち寄る食堂ではなく、「今日は特別な日だから行く場所」。

子供の私にとって、デパートの食堂はそんな存在だった。

だから懐かしく思うのは料理の味だけではない。

エレベーターで最上階へ向かう時間。

席に着いてメニューを開く瞬間。

料理が運ばれてくるまでの期待感。

そんな一日まるごとの思い出だ。

デパートの食堂は少なくなり、あの頃の風景はほとんど残っていない。

けれど、プリンアラモードやお子様ランチの話になるたび、不思議と最初に思い浮かぶのは料理ではなく、あの賑やかな食堂の空気なのである。